久保理事長からの新年のご挨拶です

会員の皆さま

 

新年明けましておめでとうございます。

 

今年のお正月は、太平洋側では穏やかな天気に恵まれましたが、皆さまどのように迎えられましたでしょうか?

2023年も、前年に引き続き、終息の見えぬコロナ禍やウクライナ戦争により、世界的なインフレによる景気後退が懸念されておりますが、巷では、干支が「癸卯(みずのと・う)」ということで、「寒気が緩み萌芽を促す年」、「飛躍の年」、「成長の年」と、言われていますね。

 

兎の跳びはねるイメージから、期待を込めて、そう唱えられているのでしょう。

私には、ちょっと楽観的過ぎるような気がしますが、皆さま如何でしょうか?

 

ところで私の場合ですが、年頭にあたり、「兎」で頭を過りましたのは、童謡の「待ちぼうけ」です。

「待ちぼうけ」は、皆さまご存じの通り、北原白秋作詞・山田耕作作曲の唱歌ですが、何とも魔訶不可思議な内容とメロディで、童謡にしては特異な存在といえましょう。

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ
ある日せっせと、野良稼ぎ
そこに兔がとんで出て
ころりころげた 木の根っこ

待ちぼうけ、待ちぼうけ
しめた。これから寝て待とうか
待てば獲物が驅けてくる
兔ぶつかれ、木のねっこ

待ちぼうけ、待ちぼうけ
昨日鍬取り、畑仕事
今日は頬づゑ、日向ぼこ
うまい切り株、木のねっこ

待ちぼうけ、待ちぼうけ
今日は今日はで待ちぼうけ
明日は明日はで森のそと
兔待ち待ち、木のねっこ

待ちぼうけ、待ちぼうけ
もとは涼しい黍畑
いまは荒野(あれの)の箒草(はうきぐさ)
寒い北風木のねっこ

実はこの唱歌は、古代中国の法家思想書「韓非子」にある「守株待兎(しゅしゅたいと)」という説話がモデルになっています。

昔、宋に農民がいた。

彼の畑の隅に切り株があり、ある日そこにうさぎがぶつかり、首の骨を折って死んだ。

獲物を持ち帰ってごちそうを食べた百姓は、それに味をしめ、次の日からは鍬を捨て、またうさぎがこないかと待っていたが、二度と来なかった。

そのために作物は実らず、百姓は国の笑いものになった。

 

法家思想では、古の聖人の徳を論じることで国を治めようとするそれまでの儒家思想を批判し、昔のやり方をそのまま用いるのではなく、時代の変化に即した変革の必要性を説きました。

これが、平時の儒家に対して、有事の法家と謂われる所以です。

「何もしないで見ているだけでは何も変わらない、行動せよ」、ということです。

 

実は、このことは環境変化・技術革新の激しい現代にも当てはまります。

当会のNPOとしての活動についても然りであり、「私たちにとっての兎とは社会課題」です。

いつまでも、(株を守りて兎を待つ)丘の上から海を語り続けていてはいけません。

 

さて、昨年の記念事業でも申し上げましたが、立派な志でスタートしたNPOも、時の経過とともに、活動面で資金・人材を維持拡大するには高い壁があることから、「NPOの寿命は10年」と言われております。

 

その面では、当会が10年経過して尚、健在であることに誇りを持つべきですが、そのことで当会のこれからの更なる10年が約束されている訳ではありません。

会員の高齢化に伴い、活動に「停滞の兆し」が随所に見えてきているのも事実です。

そこで私は、10周年を機に、本年、当会が時代の変化に対応していく為には、すぐに着手すべき5つの課題があると考えます。

 

1. 世代多様化の推進

 

先ずは、NPOとしてダイナミックに活動する為の実働戦力を増やす必要があります。

当会の組織としてのサステナビリティを考慮し、「高齢者シニアの団体」から、若年層も含めた「世代の多様化した団体」への転換と、次世代会員の増強を如何に進めていくのか?

(1)   入会負担を少なくした新会員制度を導入すること

(2)   開かれたNPOとして、定例会を広く有料開放すること

(3)   社会起業家支援を強化し、若年層の入会機会を創出すること

(4)   地方自治体との関係強化により、地域単位での公開セミナーを推進すること

等について、検討を進めてまいりたいと思います。

 

  2.情報発信力の強化

 

中間支援団体として存在感を発揮する為には、情報が集まる体制づくりが不可欠です。

その為には、当会の情報発信力を更に強化し、私たちの活動領域に関わる多くのNPO・企業との関係構築を図っていく必要があります。

(1)   広報を強化し、HPについても「見る側の目線」で抜本的に見直しを図ること

(2)   SNS活用について、外部の若年層人材の協力を積極的に仰いでいくこと

(3)   将来を見据えて、情報プラットフォームの整備に着手すること

等について、検討を進めてまいりたいと思います。

 

3. 実践プロジェクトの推進

 

昨年、当会として、高齢者・こども・シングルマザー・貧困・障がい者・難民・外国人労働者・地域活性化の8つの活動領域を定めました。

次には、我々が柔軟なチーム運営により、具体的な実践プロジェクトを企画し行動することが求められます。

 

8つの領域全てにわたり、同時に活動することは、当会の体力から見て現実的ではありません。

しかし、中間支援団体として社会課題解決を目指していく上で、それぞれの特定領域で活躍している団体を積極的に訪ねて、問題意識を共有する中で、一緒に汗を掻いてみることが重要だと思います。

 

4. アワード制度の見直し

  

現行のプラチナギルド・アワード制度は、

(1)   公募形式だが、実態は応募者が少なく、候補者の選定作業に苦慮していること

(2)   当会の日頃の活動とリンクしておらず、会員から見て、選出過程が不明瞭なこと

(3)   受賞者との事後の連携が薄く、当会として踏み込んだ活動に発展していないこと

等の重大な問題意識がありますので、早々に改革チームを編成して、今期中を目途に、制度の抜本的見直しを行います。

 

5. 事務局の再構成

 

事務局については、メンバーも創設以来限定的な人員で運営されており、閉塞感があります。

加えて、特定の担当者に負担が偏重していることから、現在の状態が続くと、今後の会運営に大きな支障が生じます。

後継者育成も含め、広く会員に事務局運営に携わって頂くことをお願いしたいと考えています。

 

以上、年頭にあたり、会員の皆さまに、私の考える当会の次の10年に向けての課題認識を共有させて頂ければと存じます。

 

先ずは、我々自身が実践活動に身を置いて汗をかくことから、問題意識が醸成され、社会課題解決の道筋も見えてくるでしょうし、提言活動というアドボカシーも行えるようになるはずです。

 

社会課題という兎に対し、当会が「待ちぼうけ」に陥らないよう、実践の一年と致しましょう。

 

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

理事長  久保 健